民事信託
民事信託、特に家族信託を活用しよう。ご相談ください。

高齢者が、財産管理を行う場合、民事信託(家族信託)を活用して相続を超えた財産承継をすることが出来るようになりました。
人間は、高齢者から認知症をへて死に至る人生を送るのが一般的です。
高齢者でありながら健康に恵まれている時に、自分の財産をどのように承継するのが最適かを考えましょう。以下のようにいろいろな方法があります。
1 遺言書を残す。
遺言書には、自分が、死亡すると効力発生することになり、財産も自分への貢献度を考慮した財産分配を可能とする。
2 成年後見制度(任意後見、法定後見)を利用する。
原則として、財産を維持しながら本人のためのみに支出することを求められる。積極的な運用はできないが、本人の身上監護の指定をすることも可能である。
3 家族信託を利用する。
財産管理を柔軟的に運用できる。たとえば、生前は、本人自身のために財産から発生した利益を享受できるようにし、自分が死亡した時は、妻にその利益を受けられるようにし、その妻の死亡後は、その長男に承継させる。最後に財産が残っていたらある時期に他の子供に与える。あるいは、途中で財産を売却する権限を与えておくなどである。
家族信託の仕組み
遺言代用信託

実例 Aさん・・夫 Bさん・・妻 
AとBは、互いに再婚同志であり、子供はいません。Aには、離婚した先妻の子供2人いるが、現在住んでいる住宅をA死亡後もBに安心して住んでもらうことが出来るようにしたいのですがBさんには、先夫との間に子供のいない状況で死亡すると、通常の方法で手続きするならBさんの兄弟にAの財産が承継されてしまうことからその手続きに躊躇しています。
そこで、このような相続関係で信託を利用することにより、問題解決することになるのです。信託契約は、Aさんを委託者兼受益者とし、Aさんの子供のうち長男を受託者とするのです。
こうすると、Aさんは、死ぬまで自分のために利用できます。また、Aさんは、自分が認知症になっても不動産の管理が、長男の役目となりますので安心して住むこともできます。自分が死んだらBさんを受益者にすると、Bさんは最後まで住むことが出来ます。Bさんが死んだら信託を終了させ、Aさんの長男に残余財産の帰属権利者とするのです。
このようにすれば、Bさん側にAの財産を承継されることなくAさんの長男に承継されるのです。
このようなことは、遺言では解決しません。

親なき後の障害者や未成年者の救済のための信託
親が元気なうちは、全く問題ありませんが、親の死亡後に残された未成年者や身体障害者等の場合、何らかの方法で生活を考えた救済を考えなければならない。今までは、遺言で、介護を条件に相続財産を遺贈させる方法ぐらいしかなかったのです。もちろん、成年後見制度を利用して、未成年者・障害者への資産の範囲内での管理もできます。
しかし、信託を利用すると、それらの人達を受益者とし、受託者が、財産を管理することになります。これだけでなく、受益者を応援する受益者代理人や信託管理人、信託監督人などの監視の目があります。また、財産管理においても、成年後見制度より柔軟的に行うことが出来ます。

共有不動産の財産管理について

共有財産は、管理をするのに共有持分の相続、同意 賃貸借契約締結の煩雑さなど、弊害があります。
信託を利用すると、共有者を委託者、一般社団法人等を受託者として、共有不動産の名義につき、信託を原因とする法人名義にします。
その法人が、賃料等収益を管理し、共有者の相続人を含む全員を受益者とするのです。
その結果、その共有不動産が、法人化することにより、その不動産から収益のあった部分を受益者として分配することになるのです。

以上の信託は、ほんの一例にすぎません。したがって、皆様の事情に合わせて信託契約を作成することになります。ご相談ください。
司法書士からの空き家対策
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)として平成26年11月27日公布され、平成27年2月26日施行されました。
これからは、市町村による空き家等対策計画の策定やその所在や所有者の調査を行うことになりました。
司法書士は、常日頃から問題を顧客から提起され、解決出来る空家も少なくありません。
空家問題を解決するためには、不動産周辺の法律知識を必要とし、どこに相談すれば解決できるのか、積極的に解決できる機関のないのが実情です。

皆様には、このような問題を司法書士に依頼されてはいかがでしょうか。
私は、相続問題、成年後見人、財産管理人制度、境界問題、筆界未定の問題等を、多く解決しております。皆様とともに解決策を提案し、その空家を含む不動産を有効活用できる方向に導きだせるよう努めていきます。
地縁団体の法人への不動産登記手続き

各市町村内には、いまでも大字や小字ごとの財産区を組織している
いわゆる「権利能力のない団体」が、現存している。
そして、当該財産区所有の不動産は、明治あるいは大正年代の町内の住民を登記名義人として、50人以上の共有名義になっている場合も見受けられます。
このような場合は、地方自冶法第260条の2第1項の規定により地縁団体法人を設立し、上記共有名義人をいわゆる「登記名義名受人」としての役割を終えて、「委任の終了」を原因とする法人化した地縁団体名義に所有権移転登記手続を行うことにより、その財産を保全することができるようになります。

━━それでは、地縁団体は、どのように設立するのでしょうか。━━
下記のとおりとなります。
   (1)地縁団体の認可までの手順
      @財産区が、不動産等財産を所有していること。
      A保有資産目録の作成、
      B構成員名簿の作成(世帯者だけを構成員とすることはできず、大字等区住民の60%以上の名簿を作成
      C規約の作成
      D代表者選任の準備
      E総会での承認と代表者選任
      F地縁団体の申請を市町村役場に行う。

   (2)地縁団体の認可申請ができれば、本件土地の名義変更するため下記調査をする。
      @ 該不動産登記名義人の相続人の調査
      A 各相続人に対し、協力支援の依頼
      B各相続人から直接「委任の終了」を原因とする地縁団体への所有権移転登記手続
      C場合によっては、原告を地縁団体、被告を各登記名義人の相続人とする訴訟手続きを行って、判決による所有権移転登記手続きを行います。

このように、簡単な手続きでないかもしれませんが、当事務所では、上記方法で多くの実績を有しております。
相談をお待ちしております。
「相続登記漏れ」
私の事務所では、相続登記手続きの依頼を受けていると、依頼者からは、その人の曽祖父や祖父の名義の不動産を所有、あるいは共有持分として所有している場合があります。
このような場合、その人の曽祖父や祖父の人達が、昭和22年5月3日以後に死亡し、新民法の相続証明書を作成している書類を所持しているなら、単なる相続登記手続きをすれば全く問題ない。

しかし、問題は、曽祖父や祖父らが死亡した後に作成された相続証明書の紛失などの場合にどうするかである。

この場合、方法は、2つある。

まず、曽祖父や祖父らの相続人から再度、遺産分割協議の証明を取り付けるか、特別受益者として事実上、相続放棄するか、あるいは、家庭裁判所に調停申立をするかなどして、通常の相続登記手続きを行う。
しかし、この方法は、多数の相続人の存在により、遺産分割協議等を行うことは困難である。

他方、上記以外の方法は、裁判所に訴える方法である。相続漏れであることの立証と、占有継続していることの時効取得の立証をすることにより、現在の承継者を名義人とすることは可能である。

私は、たびたび裁判所の力を借りて上記の方法で短期間に解決して、依頼者から感謝をいただいております。
依頼者は、相続登記漏れについて、手続きの面倒さに殆どあきらめていることが多い。
しかし、あきらめるのは、まだ早い!
このような場合、当事務所に相談いただきたいと思います。
土地家屋調査士業務と訴訟

               司法書士 土地家屋調査士 佐藤文雄
はじめに
私は、昭和53年から開業し、司法書士業務を約35年、土地家屋調査士業務も34年になるろうとして現在も相談業務等を中心に対応している毎日である。その私の業務が、大きく変化したのは「司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(平成14年法律第33号)」が平成14年4月24日に成立し、同年5月7日に交付された時からである。
司法書士には「簡易裁判所における訴訟代理業務等」を、土地家屋調査士には平成16年改正の不動産登記法による筆界特定制度の新設により、平成17年の土地家屋調査士法一部改正で「土地の筆界に関する民事紛争解決手続の業務のための認定制度」の新設により、より一層の責任と業務拡大に及んだのである。
特に、土地家屋調査士は、境界を確定することの重要性を再認識する時期となった。しかし、私は、土地家屋調査士業務について、境界を調査・確定することに関しては、法改正後から業務に大きな変化あったとは思っていない。
むしろ、外部的には、土地家屋調査士に対する認識を変化させたことは間違いない。 内部的には、境界に対する責任の重さは、加重されたが、境界の確定には、資料の収集、現場の確認等、改正前とその後とは、そんなに大きな変化はない。
裁判所での境界確定請求事件の訴訟は、時間と費用を要するとよくいわれている。果たしてそうだったのであろうか。 私は、当該訴訟に土地家屋調査士の境界に関する関与の不足ではなかろうかと思っている。また、裁判所も筆界特定のための調査を積極的に土地家屋調査士に求めてこなかった経緯もあると考える。
法改正までは、裁判所或いは弁護士も土地家屋調査士への費用の問題もあり、あるいは、土地家屋調査士制度を大いに利用する認識が不足した結果、当該事件の訴訟に費用と時間を要するようになったと思われるのである。
最近は、土地家屋調査士に「境界鑑定」の業務を依頼されるケースのあることをよく聞いている。
さて、私は、不動産訴訟に関して興味をもって業務を受託しているが、裁判手続上、土地家屋調査士の専門家は、もっと司法書士制度を利用していただきたいと思ったのである。また、司法書士も不動産の権利関係を左右する筆界についてもっと興味をもって不動産の問題を解決していただきたいと願って筆を持ったしだいである。土地家屋調査士と司法書士は、不動産問題に関して、共存共栄の関係であり、今後ともその関係を強化してほしいと願っているものである。
今回は、司法書士と土地家屋調査士各制度を利用して不動産訴訟による解決方法について理論はともかく、実践的具体例を示しながら述べるので、読者におきましては、多数のご批判、ご意見をいただきたい。

第1 不動産登記に関する訴訟
不動産に関する訴訟問題には、多種多様に存在する。そこで、土地家屋調査士と司法書士の関連訴訟となると「筆界」を中心とする部分に絞り込めば、下記のとおりである。
1 境界確定請求訴訟
2 筆界未定の解消
3 分筆をともなう所有権移転手続請求訴訟
以上の問題を詳細に、しかも具体的問題として反省も含めながら論ずることにする。
1(1) 境界確定請求訴訟
 原告 X1,X2,X3,X4
 被告 Y
 代理人 A土地家屋調査士兼司法書士
 事例
 X1らは、甲土地を売却すべく、甲の土地上の建物を取り壊して境界の測量、確定するためにAに依頼した。
Aは、Yを除く行政担当者や他の隣地の所有者に立会をもとめたところ確定したが、Yは、その立会に応じない。そこで、Aは、行政の道路境界担当者からの意見を求めたところ「民間地の全員に境界同意がなければ境界証明を発行できない。」とのことであった。
Aは、Yに対し、境界立会をするよう説得することにしたが、Yは、電話で「境界線上にあるマンホールは、当方で施工したものであり、そのマンホール部分の所有権は、当方にある。」と主張したのである。AとX1らは、境界調査測量でそのマンホールの中心部分と確信していたので不意をつかれたような主張であった。 それからは、Aは、幾度か説明したものの、拒否するばかりであった。
甲土地の買主からは「境界確定しなければ本件土地の売買契約を取り消す。」との通知にX1らは、やむなくAの提案していた境界確定請求訴訟を提起することに同意した。
(2)解決するための手順
@ 道路管理者を被告とするか否かを検討
A Yを除く民間隣地者の境界同意を用意する。 
B 本件土地の紛争地面積の訴訟物の価格が、140万円以下であるか否かを計算する。
 (3)境界確定請求訴訟の提起
  Aは、訴訟提起するためには、道路管理者を被告とすることを検討していた。Aは、行政側にその事情を説明すると「被告にはなりたくない。境界に同意する証明書を発行するが、行政としての押印は、Yを含む民間隣接者全員の同意により押印する。」とのことであった。そこで、行政側の境界証明書により被告から除くことにした。
  なお、Yを除く民間隣接者からは、全員の境界同意がそろっていた。
  また、訴訟物の価格が、140万円以下であったので簡易裁判所の管轄として提起することにした。
  訴訟物の価格は、XとYとの境界主張による係争地面積を計算して評価証明書より価格を計算することになる。
  境界確定請求事件の要件事実は、下記のとおりである。
@ 原告が、甲地を、被告が乙地をそれぞれ所有していること。
A 甲地と乙地が隣接していること。
B 原告と被告とが甲地と乙地との境界線について争いがあること。
である。しかし、私は、訴状に現実問題として境界線に争いを生じた背景や事情を記載することにしている。
(4)筆界特定制度との関係
筆界特定制度は、登記官に対する行政上の申立により筆界を特定する制度である。そしてその判断には、法的不可争力を付与されていない。したがって、境界確定請求訴訟とは、別個の制度であり、どちらを選択するかは、当事者の問題である。 私は、本件に関して言えば、境界を早急にしかも経済的観点からすれば、裁判を利用したほうがよいと思い、Xらの同意を得て提訴することとした。
本件は、結果的には、訴状の受理後、Yに訴状送達されるや否や「すぐ、境界に同意するから訴えを取り下げてくれ。」となり、判決まで至らないで解決できた事例である。
なお、注意する点を申し上げると、Yが、本件係争地部分を時効取得したと主張しても、本件の境界確定との関係で関連性のないことである。すなわち、土地の一部を時効取得したとしてもこれにより境界の移動はありえないのである。(最高裁1小判昭和43.12.2民集22巻2号270頁)
(5) 境界確定請求事件の特徴
一般の民事事件との対比から境界確定請求訴訟の特徴を概説するとまず、@裁判所は、請求棄却ができない。A欠席判決をすることができない。B裁判所は、当事者の主張に拘束されない。C主文に表示された境界線が、現地のどの地点なのか確定できないときは、主文不明確の違法を免れない(最高裁三小判昭和35,6,14最高裁民集14巻8号1324号)。
などである。
和解や調停は、所有権の範囲の確認することもできるが、筆界を特定する場合は、なじまない。

以下、訴状は、下記の内容のとおり提出した。

訴    状
          
           平成23年5月23日

郡山簡易裁判所 御中

               原告ら訴訟代理人司法書士  A
          
〒963−8025 福島県郡山市桑野○丁目〇番○号(送達場所)
          原告ら訴訟代理人 司法書士 A
          (認定番号第    号)
           TEL 
           FAX 
              
当事者の表示
 別紙当事者目録記載のとおり

境界確定請求事件
訴訟物の価額  金2万5814円
貼用印紙額   金1,000円


請 求 の 趣 旨
1 別紙物件目録1記載の土地と同目録2記載の土地との境界を、別紙図面記載のイ、ロ点を直線で結ぶ線と確定するとの判決を求める。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。
           請 求 の 原 因
1 原告らは、別紙物件目録1記載の土地(以下「原告ら所有地」という。)を、被告は、同目録2記載の土地(以下「被告所有地」という。)をそれぞれ所有している。
2 原告ら所有地と被告所有地は、隣接している。
3 両土地の境界は、別紙図面記載のイ点、ロ点直線で結ぶ線である。
4 ところが、被告は、両土地の境界について、別紙図面記載のハ点、ロ点を直線で結ぶ線であると主張して、境界を争っている。したがって、係争地の面積は、0.63平方メートルである。
5 よって、原告らは、被告に対し、両土地の境界が請求の趣旨記載の通りであることの確定を求める。
紛争地部分発生の事情
      省 略
証 拠 方 法

甲第1号証     土地登記事項証明書   2通
甲第2号証      公図         1通
甲第3号証      写真写し       3通
甲第4号証      係争地求積図     1通
甲第5号証     現況平面図       1通   
甲第6号証     地積測量図       1通
甲第7号証     市道境界確認書     1通

         附 属 書 類

1 訴状副本          1通
2 甲号証写          1通
3 評価証明書         1通
4 訴訟委任状         5通

別紙当事者目録

          原告  X1
          原告  X2
          原告  X3
          原告  X4
          上記原告ら訴訟代理人 司法書士 A
           TEL
                      FAX
 
          被告  Y

別紙物件目録 1
所在 郡山市H町
地番 69番1
地目 宅地
地積 247u93

別紙物件目録 2
所在 郡山市H町
地番 69番4
地目 宅地
地積 165u28

別紙図面

事例2
2(1)境界確定請求訴訟
原告  X
被告  Y
代理人 A土地家屋調査士兼司法書士
甲地は、強制競売によりX不動産より落札され、裁判所にて所有権移転の嘱託登記手続きがなされた。その甲地の前所有者Yは、甲地と隣接している乙地を所有していた。司法書士を兼業しているA土地家屋調査士は、上記甲地の境界調査測量の依頼を受託し、現場に出向き、調査測量を行った。
ところが、隣接している乙地の所有者Yは、前所有であった甲地が競売されたことの恨みをXに露骨に表明した。そして、Yは、境界立会には一切協力できないことをAに伝えた。また、Yは、甲地のYを除く隣接者に対しても絶対協力しないよう申し入れていた。
やむなく、Aは、Yを含む隣接者に対し「境界立会に協力しなければ、損害賠償
請求する。」旨の内容証明郵便で通知した。その結果、Yを除く全員の隣接者が
協力し境界立会したが、Yの協力を得ることができず甲地と乙地の隣接する境界線のみが確定できなかった。
そこで、Aは、Xに対し、境界確定請求訴訟の提起を提案し、了承された。
以下、AはXのため、Yに対し、簡易裁判所に訴えを提起した。

訴    状
          
                       平成19年5月20日

郡山簡易裁判所 御中

               原告訴訟代理人  A

          原告    X
          
          原告訴訟代理人 司法書士 A
          (認定番号第    号)
           TEL 
           FAX

          被告   Y

境界確定請求事件
訴訟物の価額  金39万4512円
貼用印紙額   金4,000円


請 求 の 趣 旨
1 別紙物件目録1記載の土地と同目録2記載の土地との境界を、別紙図面記載のイ、ロ点を直線で結ぶ線と確定するとの判決を求める。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。
           請 求 の 原 因
1 原告は、別紙物件目録1記載の土地(以下「原告所有地」という。)を、被告は、同目録2記載の土地(以下「被告所有地」という。)をそれぞれ所有している。
2 原告所有地と被告所有地は、隣接している。
3 両土地の境界は、別紙図面記載のイ点、ロ点の直線で結ぶ線である。
4 ところが、被告は、両土地の境界について、境界立会に応じなく、別紙図面記載のイ点、ロ点の直線で結ぶ線に争いがある。
5 よって、原告は、被告に対し、両土地の境界が請求の趣旨記載の通りであることの確定を求める。
紛争地部分発生の事情
      省 略
証 拠 方 法

甲第1号証     土地登記事項証明書   2通
甲第2号証      公図         1通
甲第3号証      写真写し       4通
甲第4号証      係争地求積図     1通
甲第5号証     現況平面図       1通   
甲第6号証     地積測量図       1通

         附 属 書 類

1 訴状副本          1通
2 甲号証写          1通
3 評価証明書         1通
4 訴訟委任状         1通

別紙物件目録 1
所在 田村郡K町
地番 71番1
地目 宅地
地積 13u53

別紙物件目録 2
所在 田村郡K町
地番 71番4
地目 宅地
地積 165u28


(図面省略)

  


事例3
3(1)境界確定請求訴訟
原告 X役場
被告 Y(登記簿上の名義人)
代理人 A土地家屋調査士兼司法書士
X村役場の担当者よりA司法書士兼土地家屋調査士に「昭和41年に道路建設
に買収した土地の所有者が、行方不明で土地分筆登記及び買収による所有権移
転登記手続を未了にして問題になっている土地がある。」との相談があった。
聞くところによると、その土地は、2筆に分かれているが、現況の道路は、そ
れぞれの筆の一部を横断するように道路敷地となっていた。昭和41年当時、土地登記簿上所有者Yの親戚の者が「これは、自分の土地であるから私の土地である。ただし、土地の登記には、自分の名前がないけれど事実上自分の所有物である。」とのことから昭和41年4月1日に買収金を支払った。そして、X村は、ただちに道路建設をして現在に至っているとのことだった。
(2)所有権移転登記手続請求事件
この事例の場合の問題点として
@ 登記簿上の土地について、その土地の一部の所有権移転登記請求権について
A 時効取得について
B 分筆登記手続の方法
C 行方不明の登記名義人となっている場合の訴訟手続について
それでは@の問題について考えることにする。
X村は、昭和41年4月1日から道路敷地として平穏かつ公然と所有の意思をもって占有してきたことから、本件土地2筆の一部を特定して時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求めていけばよいことになる。
それでは、登記簿上の一部の所有権移転登記手続を求めることができるだろうか。判例(最高二小判昭和30年6月24日民集9巻7号919頁など)も1筆の一部の土地について所有権移転登記を請求すればよいことになっている。
したがって請求の趣旨に「・・・分筆登記手続をした上で・・・」という表現を挿入する必要はない。
Aの時効取得の要件(民法162条)のうち、所有の意思、平穏、公然及び善意は、暫定真実であるから、被告側で時効取得を争う者が、立証責任を負う。
所有権移転登記手続の場合、時効取得を原因とするときは、占有開始時を登記原因の日付となることに注意する。問題は、占有の実体である。これを立証するのに現場写真や証拠資料を検討しなければならない。
Bについては、この場合、原告は、その土地の一部の分筆登記手続に必要な図面を土地家屋調査士が作成し、訴状に別紙図面を添付して裁判所に申請する。裁判所は、その図面を判決書に編綴され、その判決書を代位原因証明情報とし、所有権移転請求権を代位原因として分筆登記手続を行うことになる。
問題は、別紙図面が、残置計算でよいか否かである。すなわち、本件の分筆登記申請には、不動産登記法準則第72条2項の「特別の事情」にあたり、残置計算で地積測量図作成できるかどうかである。 本件は、土地所有者が、行方不明であること、残置部分の境界立会が不可能であること。行政機関が、官地に直接関係のない民地測量することは、越権行為にあたるなどにより「残置計算」による図面で差し支えないと思われ、実務上、受理されている。
Cの場合について、訴訟手続上、いろいろな方法を考えることができる。
まず、公示送達による方法である。この方法は、時間的からも費用的にも簡単である。 もうひとつは、不在者財産管理人を家庭裁判所に選任申立してから行う方法である。第三者(例えば、司法書士,弁護士)が、家庭裁判所より不在者財産管理人を選任されれば、その管理人を被告として訴訟手続を行うことになる。他方、特別代理人(民訴法35条1項)は「法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申立てることができる。」と規定しており、損害の発生のおそれを疎明して裁判所に選任手続を申立てることもできる。当然、被告であるから弁護士・司法書士(簡易裁判所のみ)が選任されるので費用(実務上5万円から10万円)の問題がある。
なお、本件事例の20年間占有による時効取得による所有権移転登記手続請求事件の要件事実は、下記のとおりである。
@ある時点からの占有事実
A@から20年経過時における占有事実
B時効の援用の意思表示
C登記簿上の被告名義人の存在
本件の訴訟手続きは、公示送達による方法で行うことになった。
下記様式のとおり訴状を作成し、訴状と公示送達とも同時に申請した。
なお、判決確定後は、判決を代位原因証書とする債権者代位による土地分筆登記、所有権移転登記、地目変更登記の各手続きにより終了となる。

訴    状
          
           平成23年4月8日

簡易裁判所 御中

                 原告訴訟代理人司法書士 佐藤文雄

〒963−6392 福島県○○村
          原告    X村
          上記代表者 X村長   
           
〒          原告訴訟代理人 司法書士  A
           TEL 
           FAX 

住居所不明
登記簿上の住所 福島県○○村
          被告Y   


所有権移転登記手続請求事件
訴訟物の価額  金3421円
貼用印紙額   金1,000円

請 求 の 趣 旨
1 被告は、原告に対し、別紙物件目録(1)記載の土地のうち、別紙図面のイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、オ、ワ、カ、ヨ、タ、イの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分412平方メートルについて、昭和41年4月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
2 被告は、原告に対し、別紙物件目録(2)記載の土地のうち、別紙図面のル、ヌ、レ、ソ、ルの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分60平方メートルについて、昭和41年4月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
3 訴訟費用は、原告の負担とする。
との判決を求める。
請 求 の 原 因
1 原告は、小学校の建設するにあたり、別紙物件目録記載(1)、同(2)の各土地の一部を進入道路として買収すべく、昭和40年下旬、被告の自称親類縁者から購入したとされる訴外亡○○と買収の交渉を行い、買収代金を支払った。
2 原告は、昭和41年4月1日付で別紙物件目録記載(1)の土地の内、別紙図面イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、オ、ワ、カ、ヨ、タ、イの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分412平方メートル(以下「本件土地1」という。)、別紙物件目録記載(2)の土地の内、別紙図面のル、ヌ、レ、ソ、ルの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分60平方メートル(以下「本件土地2」という。)について、昭和41年4月1日買収し、道路工事をおこなった。
3 原告は、本件土地1及び同2を公衆のため、道路として利用されて修繕管理をしながら占有し、取得したと疑わず、被告及び本件土地1、同2の隣接地からなんらの関心を持たず、異議を述べられることもなかった。
4 原告は、昭和41年4月1日からの20年間、以上のとおり、平穏かつ公然と所有の意思を持って玉川村の所有として占有してきた。
5 しかし、本件土地1及び同2は、不動産登記簿上には、被告名義に所有権が登記されている。             (甲第1号証)
6 原告は、本件土地1及び同2について昭和61年4月1日の経過による時効取得完成により所有権を取得したので、この時効の効果を本訴状によって時効援用の意思表示をする。
7 よって、原告は、被告に対し、本件土地1及び同2について、それぞれ昭和41年4月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求めるため、この訴えを提起する。以上
立 証 方 法
1  甲第1号証       登記事項証明書    2通
2  甲第2号証       公図写し       2通
3  甲第3号証       現況図        1通
4  甲第4号証       現場写真       8通

            添 付 書 類
1  訴状副本                       1通
2  甲号証写し                      1通
3  評価証明書                      1通
4  訴訟委任状                      1通

 

別紙物件目録土地
(1)所  在  ○○村
   地  番  58番1
   地  目  山林
   地  積  503平方メートル
  (別紙図面イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、オ、ワ、カ、ヨ、タ、イの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分412平方メートル、分筆後予定地番58番7)

(2)所  在  ○○村
   地  番  58番3
   地  目  山林
   地  積  541平方メートル
   (別紙図面のル、ヌ、レ、ソ、ルの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分60平方メートル、分筆後の予定地番58番8)


平成23年(ハ)第    号所有権移転登記手続請求事件
原告  X村
被告 Y
公示送達の申立書                  

 上記当事者間の御庁頭書事件について、下記被告の住所、居所、その他送達をなすべき場所が知れないので、通常の手続で訴状等の送達ができないから公示送達によることを許可されたく申し立てます。
                    平成23年4月○日
               原告訴訟代理人司法書士 A
  
簡易裁判所 御中

    添付書類      
    1  報告書           1通
    2  不在住証明書        1通
    3  不在籍証明書        1通
    4  不送達郵便         1通


住居所不明・登記簿上の住所
  被告 Y

 


地積測量図(1)(2)
公図写し

  

 事例4
4(1) 筆界未定地の解消のための所有権移転登記手続請求訴訟
 原告 筆界未定地の一部の土地の占有者
 被告 上記登記簿上の行方不明者
 Hは、自分の農地に行方の分からない土地を含む結果、筆界未定地の土地を9筆抱えていた。 弁護士や司法書士に相談しても解決できずにいて、その土地の利用を妨げていた。そして、ある建築会社からの紹介でA土地家屋調査士兼司法書士に相談のため来訪した。 公図を取り寄せると10筆の筆界未定であったが、その筆界未定地の10筆中、1筆(以下甲土地)の所有者不明Yのまま残っていた。
このYの土地が確定できればそれ以外の9筆(以下乙土地)の所有権者が同じであったので合筆して確定できそうであった。
Aは、甲土地の所有者未定の調査のため、現地に出向き、誰が占有者なのかを調査した。現地では、甲土地上に物置小屋があり、境界もほぼ確定しやすい状態に土盛りしていた。Aは、その建物利用者に事情を聞くと「私Xは、私の父が登記簿上の所有者の相続人であるという人からこの土地を昭和55年12月22日に買ったが、その土地を昭和62年2月1日に贈与を受けている。しかし、登記できないで現在に至っている。」とのことであった。
Aは、まず、本件筆界未定地を解消するため、下記順序に従ってすすめることにした。
@ 甲土地をXが原告、Yを被告として時効取得による所有権移転登記手続請求事件として提訴
A 甲土地を現在の所有者Xに所有権移転登記をする。
B 乙地と甲地との境界を確定する。
C 乙地の合筆後、地図訂正、地積更正登記をする。
たとえば、10筆の土地の内、土地の異なる所有者数筆の所有権登記名義人が登記簿上に存在するならば、境界確定請求訴訟も提起する必要がある。この場合の原告は、境界確定する土地所有者であり、被告は、その他の筆界未定地の登記簿上の所有者全員となる。これによって地図訂正、地積更正登記が可能になる。この方法により、筆界未定地の境界を全部確定しなくとも、ある特定の筆界を確定することにより、地図訂正、地籍更正登記が可能になる。
最後に
私は、司法書士兼土地家屋調査士として業務の一端を紹介させていただきました。 我々は、同一内容の業務などありません。毎日が試行錯誤をしながら更なる研究を進めていきたいと思っています。    以上

訴    状
          
           平成21年4月20日

郡山簡易裁判所 御中

                   原告訴訟代理人 A

      〒963−0541        
           福島県郡山市
           原 告   X
          (送達場所)福島県郡山市
           原告訴訟代理人司法書士 
    TEL 
             FAX
      住居所不明  登記簿上の住所
           福島県安積郡
           被告   Y
   
           

所有権移転登記手続請求事件
訴訟物の価額  金1万260円
貼用印紙額   金1,000円
請 求 の 趣 旨
1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地について、昭和62年2月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。

請 求 の 原 因
1 訴外野内勝吉(以下単に「野内」という。)は、原告の父親である。
野内は、昭和55年12月22日に被告の親類と称する訴外○○から金140万5千円の売買代金を支払って別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の所有権を取得した。
2 原告は、昭和62年2月1日、○○より本件土地の東側近隣地の住宅用敷地として利用するため、贈与を受けると同時に本件土地の贈与を受けた。
3 原告は、本件土地に木造トタン葺平家建の物置小屋を建てて、本件土地を20年間、善意で平穏かつ公然と所有の意思を持って占有し、他の誰からも異議を述べる者はなかった。
4 本件土地は、不動産登記簿上には、被告名義に所有権が登記されている。
5 原告は、本件土地について平成19年2月1日、20年の経過による時効取得完成により所有権を取得したので、この時効の効果を、本訴状をもって援用する意思表示をする。
6 よって、原告は、被告らに対し、昭和62年2月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求めるためこの訴えを提起する。     以上
           証 拠 方 法
1  甲第1号証       登記事項証明書    1通
2  甲第2号証       閉鎖登記簿謄本    1通
3  甲第3号証       公図写し 
4  甲第4号証       住宅地図(写し)   1通
5  甲第5号証       写真写し       6通
6  甲第6号証       現況平面図      1通
7  甲第7号証       境界承諾書      1通 
8  甲第8号証       不動産売買契約書   1通
9  甲第9号証       念書         1通
10  甲第10号証       陳述書        2通

            附 属 書 類
1  訴状副本                     1通
2  甲号証写し                    2通
3  評価証明書                    1通
4  訴訟委任状                    1通


          物 件 目 録

    所 在     郡山市
    地 番     16番
    地 目     田
    地 積     152平方メートル 

境界承諾書
現況図

不動産登記と裁判

私の経験した事例の一部であるが、この事例に関する意見等いただければ幸いである。

例題 1

 Xは、Yより昭和47年9月27日、郡山市の土地を年月日不詳の売買代金630万円の売買契約を締結したが、昭和47年9月27日付領収書金300万円の証拠資料があった。当時、本件土地には、A銀行の抵当権設定登記がなされ、被担保債権額300万円の残金があった。Xは、その残額を支払った後、本件土地の領収書をYから交付された。なお、本件土地の固定資産税は、Xが支払ってきた。 司法書士は、Xより所有権移転登記の依頼があった。しかし、Yは、それに応じない。

訴訟物 所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権

管轄  不動産所在地

要件事実 @債権的登記請求権・・・・契約締結から消滅時効10年の抗弁

     A物権変動的登記請求権

1 前主が当該不動産をもと所有していたこと

2 前主から原告へ所有権移転原因事実

3 当該不動産に被告名義の登記となっていること又は原告名義になっていないこと。

 ただし、3については、争いがある。しかし、実務上、記載する。

訴状の作成の注意

 当職が作成したように、送達場所を司法書士事務所にすると、弁護士からクレームがくることがある。  現在は、このようにしないほう 
がよい。

登記手続き上の注意

 本件のように被告の住所が登記と違う場合

 登記義務者が住所を移転し、その旨の登記を了していない場合は、判決書を代位原因を証する書面として、債権者代位による所有権移転登  
記名義人の住所変更の登記をする。 なお、実務上、判決書に登記簿上の住所を併記する方法がよく用いられるが(裁判所の当事者適格の 
有無を確認するため)、判決によって所有権移転の登記を申請する場合には、たとえ判決正本に現実の住所と登記簿の住所が併記されてい  
たとしても、住所変更の登記を省略できない。(神崎満治郎著 判決による登記の実務と理論 テイハン254P)

例題 2

郡山市の土地に亡三郎が、昭和35年頃売買により取得したが、平成17年8月15日に死亡した。

昭和37年6月1日、Y株式会社に本件土地を貸し渡し、賃料年1坪当たり500円、期間を満10年間とする賃借権登記を行っていた。Y株式会社は、本件土地に店舗兼倉庫の建物敷地として営業していたが、昭和59年3月23日破産終結し、登記簿謄本は、閉鎖された。

Xは、本件土地を担保に銀行より融資を受けようとしたところ、当該賃借権の存在により断られた。 そのため、当該賃借権の抹消登記手続きをするため本訴となった。

訴訟物 所有権に基づく妨害排除請求権としての賃借権設定登記抹消登記手続請求権

要件事実

1 原告が、当該不動産を所有していること

2 当該不動産に被告名義の賃借権登記があること。

実務上の訴状作成の注意点

1 本件の場合、確かに土地に関する内容のみ記載すればよいように考える

のだが、被告が、実際、存在しない以上、証拠書類として建物の関係書類

を準備する。

2 抹消原因がわからないときは、特に記載する必要はない。

3 本件の場合、破産管財人である弁護士の協力があれば、訴訟を求めなくとも抹消登記が可能である。 しかし、その協力が得られなければ、本件のように特別代理人(民訴法35条)を選任して、訴える以外にない。

  弁護士が、報酬を放棄するとあるが、裁判所との関係で報酬を放棄するのであって、原告から特別代理人に報酬を支払うのは当然である。

  このときは、報酬を放棄する旨を裁判所に提出する。

登記手続き上の問題点

  判決書に、登記すべき権利の変動の原因があるときは、その原因により、その記載がなければ、判決とする。(昭和29年5月8日付民事甲938号民事局長回答)

例題3

Xは、昭和53年4月9日に死亡した義雄の子である。Xは、所有権登記名

義人である被相続人義雄の遺産分割協議を行うため協議したところ、Xの単

独相続に同意したが、相続人中2人以外は、押印だけでなく印鑑証明書の交

付を拒否してきた。

このままでは、相続登記ができないので、裁判手続きを行いたい。

訴訟物  土地の所有権確認請求権

確認の利益 所有権の争いの存在

要件事実

1 Xが本件土地の所有権を有していること

2 確認の利益を基礎付ける事実

実務上の訴状作成の注意点

1 原告被告が4人以上の場合は、当事者目録をつけたほうがよい。

2 相続の戸籍謄本等は、訴状正本に添付し、被告のための訴状副本は、相続説明関係図を利用する。

3 本件は、弁護士法第23条の2に基づく照会による下記の別紙通達を参考に申請した。

登記手続き上の問題点

1 悩ましいところは、通達の内容に「判決理由中に遺産分割協議が成立して原告が、当該不動産を相続したことの記載」を必要とし、さらに「判決理由中の記載には、直接既判力が及ばないとしても、原告が、遺産分割協議により所有権を取得した旨は、当該判決の理由において記載されるのであろうから、この判決と遺産分割協議書の双方を持って、真正な相続を証する書面が添付されているものとして取り扱って差し支えない。」とあるが、判決理由の中に遺産分割協議により所有権を取得したかどうか記載する義務がないのである。

2 上記の場合は、訴状の受理証明書を添付して、申請する。

例題4

X寺は、墓場の駐車場として昭和59年9月頃から利用していた。

しかし、その土地は、昭和59年4月ごろ、土地改良事業により共有地となっている土地をX寺に押し付けられたものである。

X寺は、昭和59年9月からの時効取得の援用の意思表示をYら30名に本訴状送達をもって通知した。

訴訟物 所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権

要件事実

1 ある時点で本件土地を占有していたこと

2 1の時から20年経過した時点で本件土地を占有していたこと

3 援用権者が相手方に対し、時効を援用したこと。

4 Xの所有権に対する妨害としてのY名義の所有権移転登記の存在。

実務上、訴状の作成の注意点

1 請求の趣旨の「所有権移転登記手続きをせよ。」は、登記手続き上、「X寺を除く共有者全員持分全部移転登記手続をせよ。」である  
が、法務局では、どちらでもよいとのことであった。

2 本件は、戦前に登記された所有権登記名義人であったので、不在籍不在住証明を取得して公示送達による手続きを行った。

3 時効取得の場合は、現場がどのように利用されているかなどを判断するため、写真等を添付する必要がある。

4 このような場合、特別代理人制度を利用する方法もある。また、不在者財産管理人制度を利用して、家庭裁判所の許可を得て時効取得する方法(裁判必要なし)もある。

5 書記官によって異なるが、上記の場合でも、いったん被告らに送達して返送されてきた被告のみ、公示送達する取扱の場合もある。

6 被告が、多人数になるときは、被告にも番号をつける。

登記上の注意事項

1 時効取得を原因とする場合は、時効取得の起算日を原因とする所有権移転である。

例題5

Xらの父親であるAは、昭和52年12月1日新築による建物を所有している。

また、Xらの母親Bは、上記建物の敷地を所有している。

Aは、平成18年2月22日死亡し、Bは、平成17年12月14日死亡した。

Xらは、本件土地の敷地を測量した結果、隣地の土地の一部にまたがって建物

が建築されていることが判明した。 Xらは、その土地の一部を時効取得によ

る援用して自己の住宅敷地にしたい。

訴訟物 所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権

要件事実 @ある時点で本件土地を占有していたこと

     A@の時点から20年経過した時点で占有していたこと

B援用権者が相手方に対し、時効援用の意思表示をしたこと

実務上の訴状作成の注意点

1 一部の所有権移転登記をするためには、分筆登記も必要である。本来、分筆登記の場合、測量は、一部の土地だけではなく、その残地も測量した図面が必要であるが、判決による一部の分筆登記は、残地を測量する必要がない。(したがって、和解や調停による場合は、全部の土地を測量)

2 共同相続人の1人から時効取得を主張する場合、自己の共有持分のみの所有権しか主張できない。 本件の場合、共同相続人全員が2人なので、原告として2人で申請した。(最高裁平成13年7月10日第3小法廷判決)

3 請求の趣旨の書き方で「・・・・亡Bへの所有権移転登記手続をせよ。」とすることもできる。この場合、保存行為として相続人単独で被相続人Bへの所有権移転登記手続を求めることができる。当然、固有必要的共同訴訟ではない。

登記手続きの注意点

 時効取得と登記の論点は、下記のとおり

1 本件の事件について整理すると、時効起算日昭和52年12月1日、起算日当時の所有者Bの死亡日平成17年12月14日、時効完成日平成9年12月1日であるが、このように、時効期間中に、時効取得者に相続が開始した場合、一旦、亡B名義に時効取得による所有権移転登記をすべきである。(新版民事訴訟と不動産登記一問一答 テイハン113・114P)

2 この場合、時効完成後、亡B相続人の内の1人が現実に占有していたとしても1人から時効取得による所有権移転登記手続を求めることができるかどうか問題であるが、結論は、遺産分割等立証しない限りできない。

 

参考書籍

 1 要件事実の考え方と実務 加藤新太郎・細野敦著 民事法研究会発行

 2 判決による登記の実務と理論 神埼満治郎著 テイハン

 3 要件事実マニュアル 岡口基一著  ぎょうせい

 4 不動産登記訴訟の実務  長野県弁護士会編  第一法規

 5 事例式 不動産登記申請マニュアル 新日本法規

 6 新版民事訴訟と不動産登記一問一答 テイハン 青山正明 編著 

 7 司法書士月報 2004年5月号 47P  立命館大学法学部助教授 本山敦「時効の援用と共同相続」

 


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