司法書士倫理

【司法書士倫理の歴史】

1 昭和54年、日司連第34回総会で決議・制定

   司法書士は、国民の権利を保全することを使命とする。 この使命を果たすため、ここに倫理綱領を定め、自ら実践し、社会秩序の安定と進歩に寄与し、もって国民の期待と信頼に応えようとするものである。

  倫理綱領

司法書士は、国民の権利を擁護し、社会秩序の安定と進歩に寄与する。

司法書士は、常に品性を陶冶し、名誉と信義を重んずる。

司法書士は、正義を求め、不正を匡す。

司法書士は、法令及び実務に精通し、構成誠実に職務を行う。

司法書士は、法令及び会則を守り、自冶の精神を確立する。

 

2 司法書士執務規範要綱基準

  平成10年、日司連第56回定時総会で決議・制定

 

3 新司法書士倫理

  平成15年、日司連第64回総会決議・制定

  司法書士の専門職業人としての行為及び心構え等の行動規範である。

連合会総会では、日司連会則に準ずるものとして決議した。

司法書士法第23条により遵守義務がある。しかし、会則そのものではない。

@ 「司法書士倫理」は行為規範であり、裁判規範ではない。

A 懲戒事由との関係として、法第47条(司法書士に対する懲戒)

B 「司法書士が、この法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、・・・・・次に掲げる処分をすることができる。

  一 戒告

  二 二年以内の業務停止

  三 業務の禁止

 

司法書士法上の義務

法2条   品位保持 法令及び実務精通義務、誠実義務

法20条  事務所の設置

法21条  依頼に応じる義務 (但し簡裁訴訟関係業務を除く)

法22条  業務を行い得ない事件

法23条  会則遵守義務

法24条  秘密保持義務

法25条  研修・研鑽義務

 

司法書士法施行規則上の義務

施行規則19条 二つ以上の事務所設置禁止

同   20条 司法書士である旨の事務所の表示

同   21条 職印

同   22条 報酬の基準を明示する義務

同   24条 他人による業務取扱いの禁止

同   25条 補助者の届出

同   26条 不当な依頼誘致の禁止

同   27条 受任の拒否の理由書提示

同   28条 職印を押印した書類の作成

同   29条 領収書の交付

同   30条 事件簿の調製

 

会則上の義務 主として7章、8章

会則24条 会費納入義務

同 52条 綱紀委員会の調査受忍義務

同 79条 品位保持義務

同 80条 非司提携の禁止

同 81条 違法不正行為の助長の禁止

同 82条 相手からの利益享受等の禁止

同 83条 依頼を受けることのできない業務

同 84条 係争目的物の譲受禁止

同 85条 不当な金品の提供・不当な手段による誘致行為の禁止

同 86条 虚偽・誇大・品位を欠く広告の禁止

同 87条 依頼順序による速やかな業務

同 88条 法令・依頼の趣旨にそわない書類作成禁止

同 89条 事務所内の見やすい場所の報酬表の明示

同 90条 領収書の作成交付・職印の押印

同 91条 事件簿の調製

同 92条 委任契約の作成・締結

同 93条 業務報告書の提出

同 94条 事務所内の司法書士会員の表示

同 96条 名称使用の制限

同 97条 会員証の携行・司法書士徽章の着用義務

同 98条 連合会会則、本会会則、規則、支部規則の遵守義務

同100条 補助者の届出

同101条 補助者等の使用責任

同102条 業務調査の受忍義務

同109条 紛議調停期日の出頭義務 

時効と相続

<時効取得と相続>

 共同相続人の内の1人が、被相続人所有の土地の占有を20年間継続した場合

 →「共同相続人の一人が単独に相続したものと信じて疑わず、相続開始とともに相続財産を現実に占有し、その管理、使用を専行してその収益を独占し、公租公課も自己の名でその負担において納付してきており、これについて他の相続人がなんら関心ももたず、異議を述べなかった等の事情がある場合には、前記相続人は、その相続のときから相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したものというべきである。」

(最判昭47・9・8民集26・7・1348、判時685・92)

 (共同相続人の一人が、相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したと認められた事例)

→ 取得時効の要件である「所有の意思」の有無は、占有の取得原因たる事実である権原の客観的性質によって決まるというのが、通説・判例。

(最判45・6・18裁集民99・375、判時600・83)。

上記判決は、この考え方を前提としつつ、相続による占有取得の二面性を考慮して、単独相続であると誤信した事情、現実の占有状況、公租公課の負担、他の共同相続人が何等の異議を述べていないことなどの、占有に関する具体的事情を総合的にみたうえで、自主占有の取得を認めたもの。

→ したがって、共同相続人の一人が相続財産の占有を現実に始めたからといって、当然当該相続人が自主占有を取得することになることを認めたわけではない。  

      (以上 「図解 相続・贈与事例便覧」新日本法規出版株式会社)

          (「民集」=「最高裁判所民事判例集」)

(「裁集民」=「最高裁判所裁判集(民事)」)

(「判時」=「判例時報」)

 被相続人が生前、第三者B所有の土地の占有を継続し、時効が完成した場合に、共同相続人の一人AがBに対し請求する場合

被相続人が生前に占有を20年間継続して、時効が完成し、裁判外でBに対し時効を援用していた場合 

→ Aは、Bに対して、保存行為として被相続人名義への時効取得による所有権移転登記請求をする。

被相続人の占有期間及び相続人の占有期間を通算して20年経過または、被相続人の占有期間が20年を超えていたが、被相続人が時効の援用をしていなかった場合

→ 相続人において取得時効を援用できる。

→ 相続人の全員又はその一部の者が当該土地を占有していない場合にも、相続人に占有権の相続を認めるのが通説、判例であるので、当該土地を現実に占有していない共同相続人も、取得時効を援用することが認められる。

  → 「被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効の援用ができるにすぎないと解するのが相当である。」

(最判平13・7・10民集55・5・955)

    → Aは、自己の相続分の割合の限度で取得時効を援用することができない。

→ 土地全部について時効取得による所有権移転登記を求めるためには、相続人全員で時効の援用をしなければならない。           

    (以上 「新版 民事訴訟と不動産登記一問一答」株式会社テイハン)

        (「民集」=「最高裁判所民事判例集」)

 3.時効取得された土地の所有者に相続が発生している場合

  @ 時効の起算日前に相続が開始していた場合

    → 時効取得による所有権移転登記手続請求訴訟を提起する場合、被告は土地所有者の相続人全員。

    → 時効取得によるBへの所有権移転登記の前提として、所有者の相続登記が必要(登記研究455・89)。時効取得が訴訟による場合は、代位で相続登記を行う。          

時効期間中に相続が開始し、相続登記が完了している場合

→ 時効取得による所有権移転登記手続請求訴訟を提起する場合、被告は現在の登記名義人。

→ 相続登記を抹消することなく、現在の登記名義人から時効取得者へ所有権移転登記をする。    

時効期間中に相続が開始したが、相続登記がなされていない場合

    → 時効取得による所有権移転登記手続請求訴訟を提起する場合、被告は土地所有者の相続人全員。

→ 先例等は存在しないようであるが、時効の効力が起算日に遡及し、起算日を登記原因日付としていることから、あえて相続登記をするまでもなく、被相続人名義からそのまま時効取得者に所有権移転登記を行えば足りるものと思われる。    

(以上 「事例式不動産登記申請マニュアル」新日本法規出版株式会社)

                    以上 文責 司法書士佐藤文雄

高齢者の財産管理

【成年後見制度】

1 成年後見制度とは?
私たちは、個人的な差異はあるとしても、高齢になれば誰でも物事の判断能力が劣ってきます。 高齢者は、判断能力が十分でないためマルチ商法とか不動産売買等で誤った判断をしてお年寄りを食い物にされがちです。
このように自己判断が十分でない場合、法的に支援するのが成年後見制度です。 従来は禁治産、準禁治産制度がありましたが、平成12年4月1日施行され変更になりました。 旧法は、社会的偏見をともなった硬直的で利用しにくい面を持っていました。
新しい法律は、できるだけ自分でできることは自分でする「自己決定権の尊重」「残存能力の活用」「ノーマライゼーションの達成」などを理念としています。

2 成年後見制度の三類型
精神上の障害による判断能力の不十分さの程度により、後見、保佐、補助の三段階があります。
後見・・・精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況に在る者
保佐・・・精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者
補助・・・精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者

3 家庭裁判所への申し立て
後見制度は、前記2項の精神的障害により家庭裁判所への申し立てにより開始します。 申立権者は、本人はもちろん、配偶者、四親等内の親族、検察官、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人です。ただし、補助開始の申し立て時は、本人の同意が必要になります。
後見開始の審判までの流れ
後見開始の審判の申し立て・・・→家庭裁判所調査官による調査・・・→
医師の精神鑑定(不要のときもある)・・・→後見開始の選任

4 成年後見の終了
死亡によっても終了しない委任はありえる。民法653条1号に終了原因として委任者または受任者の死亡が規定されている。しかし、この規定は、任意規定であり、当事者の死亡によっても終了しない委任もありえる。

5 法定後見制度
ノーマライゼーションの原理(自分の能力の範囲内で自分でできることは自分の判断と能力を尊重する)
* 成年後見人・・・・・成年被後見人・・・成年後見人を監督する人を成年   
後見監督人という。
* 保佐人・・・・・・・被保佐人
* 補助人・・・・・・・被補助人
@ 財産管理のための成年後見人
A 身上看護のための成年後見人

6 任意後見制度
任意後見制度は本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときの後見事務の内容と後見する人(任意後見人といいます)を、自ら事前の契約によって決めておく制度です(公正証書を作成します)。なお、任意後見制度での家庭裁判所の関与は、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人を家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するにとどまります。
もう少し分かりやすく言いますと、今は元気でなんでも自分で決められるけど、将来は認知症になってしまうかも・・・という不安を感じている方が、将来を見越して事前に公証人役場で任意後見契約を結んでおき、認知症かなぁと思った時に家庭裁判所に申し立てをして任意後見監督人の選任をしてもらうといったものです(任意後見監督人は本人が選んだ任意後見人がきちんと仕事をしているかチェックします)。
なお、任意後見契約においては任意後見人を誰にするか、どこまでの後見事務を委任するかは話し合いで自由に決めることができます。ただし、一身専属的な権利(たとえば、結婚、離婚、養子縁組など)については任意後見契約に盛り込むことはできません。

*任意後見契約の解除
任意後見監督人選任以前・・・公証人の認証をした内容証明付解除の意思表示をするか、合意解約書。その配達証明付郵便を添付して登記所に対し終了の登記をする。
任意後見人選任以後・・・・内容証明付解除の意思表示と裁判所の許可の謄本を添付して終了の登記をする。

任意後見制度の流れ

 今は元気なので何でも自分で決められるが、将来認知症になったときのことが心配だ
現時点では判断能力に問題ない方のみ利用できます
  信頼できる人(家族、友人、弁護士、司法書士等の専門家)と任意後見契約を締結
   公証人役場で公正証書を作成します
東京法務局にその旨が登記されます
  少し痴呆の症状がみられるようになった
   
  家庭裁判所に申し立て
   家庭裁判所が選任した任意後見監督人が任意後見人の仕事をチェックします
  任意後見人が任意後見契約で定められた仕事(財産の管理など)を行います

財産管理契約・・・任意後見制度に付随する契約で民法上の委任契約、    
特約により死後事務委任契約も兼ねる場合あり
見守り契約・・・・判断能力のあるときに、月1回程度の見守りをする。
任意後見契約・・・判断能力のあるときに見守り契約、財産管理契約、               
死後事務委任契約を兼ねることも可能・・・判断能力を喪失した時任意後見監督人の選任を要す。
・・・任意後見契約の効力発生
死後事務委任契約
7法定後見制度と任意後見制度の違い
家族の支えがある場合は、任意後見制度を選ぶべき
自己実現を貫きたければ任意後見、本人の意思尊重より財産保護支援したければ法定後見
死後の事務処理を求めるならば、任意後見
法定後見は、被後見人本人の能力が定型的に制限され、選挙権、被選挙権の剥奪、任意後見は、能力の制限無し
法定後見は、死亡とともに終了し、任意後見は、死後の事務管理を依頼できる。
横領、詐欺、窃盗等の犯罪で法定後見の場合、親族相盗例の適用なく、免除されないが、任意後見には、そのような犯罪について免除されうる。


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